これからのホテルに求められるラグジュアリーは、豪華な内装や過剰なサービスを見せることだけではなく、宿泊者が不便やストレスを感じる前に、必要なことが自然に整っている体験へと変わりつつあります。
私たちは、こうした上質さをホテル接客における「クワイエットラグジュアリー」と捉えています。スタッフが常に話しかけるのではなく、静かに過ごしたい人には適切な距離を保ち、助けを必要とする瞬間にはすぐに応える。宿泊者の希望が、特別なこととしてではなく、ごく自然にサービスへ反映されている。目立つ演出はなくても、一人ひとりに的確に応える接客こそ、現代の上質さだと考えます。
これまで上質なホテル接客では、スタッフが積極的に声をかけ、人の温かさを前面に出したおもてなしが重視されてきました。しかし、現在の旅行者が求めているのは、常に人が寄り添うことだけではありません。温かい接客が不要になったわけではなく、大切なのは、一律に距離を縮めることではなく、宿泊者の希望を正確に理解し、その人に合った距離感で自然に応えることです。こうした目立たずとも行き届いた接客が、これからの上質さとして重要になっています。
見せる豪華さから、感じさせない上質さへ
この変化は、単なるイメージや一時的な流行ではありません。マッキンゼーは、5大陸の象徴的なラグジュアリー/ウルトララグジュアリーホテルで勤務経験を持つ現職・元総支配人12人へのインタビューをもとに、立地や美しい設計だけでは十分ではなく、顧客のニーズを先読みし、期待を超え、一連の体験をシームレスに感じさせる「卓越性の文化」が重要な差別化要因だと論じています。
また、マッキンゼーが2023年7月に米国の旅行者3,200人を対象に実施した調査では、今後旅行ブランドを選ぶ際に最も重視される理由は、価格に見合う価値、品質、利便性ではなく、「そのブランドでの過去の良い体験」でした。宿泊分野では、「より高い料金を払う価値がある体験」が顧客ロイヤルティに最も影響する要因とされています。
旅行者が旅に求める価値は、華やかさだけでなく、「静けさ」「自分のペース」「心身の回復」へと広がっています。ヒルトンが日本を含む14カ国の旅行予定者14,009人を対象に実施した2026年のグローバル調査では、レジャー旅行の動機として「休息と充電」が最多の56%となりました。また、65%がホテルからのテキストによる挨拶や連絡に価値を感じると回答しています。これは対面接客を避けたいことを直接示すものではありませんが、テキストを含む非対面の連絡手段にも一定の需要があることを示唆しています。
特にラグジュアリー市場では、個別最適への期待が明確になっています。マリオット・インターナショナルのラグジュアリー・グループが、日本を含むアジア太平洋7市場の富裕層旅行者1,750人を対象に実施した2025年の調査では、93%がパーソナライズされた体験を旅行先選びで重要とし、90%がウェルネス関連の提供内容を予約判断の重要な要因と回答しました。同レポートは、富裕層旅行者の関心が旅行の量や表面的な豪華さから、ウェルビーイング、感情的価値、意図を持って設計された体験へ移りつつあると分析しています。
「クワイエットラグジュアリー」という言葉自体が、すべての旅行者に求められているということではありません。しかし、その構成要素である静けさ、自分のペース、パーソナライズ、摩擦の少ない手続き、必要なときに受けられる人間的なサポートは、複数の旅行者調査に共通して表れています。
ESTAYが担うのは、接客の置き換えではない
この流れの中で、ESTAYが担える役割は、接客を単純にアプリへ置き換えることではありません。ESTAYが目指しているのは、宿泊者が何度も説明しなくても、必要なサービスが、必要なタイミングと方法で静かに届く仕組みです。
例えば、「子どもが寝ているので、ノックをせずにタオルを届けてほしい」という依頼があった場合、重要なのはタオルの注文機能だけではありません。「ノックをしない」「できるだけ静かに」「希望時間までに」という背景まで正確に理解し、適切なスタッフへ伝え、対応完了まで確認する必要があります。
問い合わせ内容、宿泊者の状況、希望時間、連絡方法を一つの依頼として扱えるようにすることで、フロントから客室担当への伝達漏れや、宿泊者による再説明を減らせます。宿泊者が体験するのはテクノロジーの便利さではなく、希望どおりにサービスが静かに届いたという結果です。
見えない上質さは、ホテル内部の連携から生まれる
ESTAYが目指す価値は、宿泊者に見える画面だけではなく、ホテル内部の連携にあります。依頼を受け付け、内容と緊急度を整理し、担当部署へつなぎ、対応状況を共有し、解決まで確認する。こうした流れを支えることで、伝達漏れや対応のばらつきを抑えやすくなります。
さらに、「どのような状況で、何を求められ、どう対応し、どのような結果になったか」を記録できれば、優秀なスタッフが経験的に行っている気配りを、ホテル全体で再現しやすくなります。受付、分類、担当割当、状況共有、解決確認といった業務をテクノロジーが支え、人は感情への配慮、例外的な判断、提案など、人にしかできない接客へ集中できます。
人手不足の中で、接客品質と生産性を両立する
観光庁は、令和6年度(2024年度)から宿泊業の人手不足解消に向けた設備投資等への支援を実施し、設備投資や業務効率化によって省力化やサービス向上を実現した事例を公開しています。2026年4月には、宿泊事業者による効果的なIT活用を支援し、生産性向上・経営高度化につなげる「宿泊施設のためのIT活用ハンドブック」を公表しました。
観光DX全体の取り組みとして、旅行者の利便性向上や観光産業の生産性向上なども掲げています。また、PMSと各種システムのデータ連携仕様が標準化されていないためシステム間の連携が進まず、それが観光産業の生産性低下の一因になっていると説明しています。
つまりホテルには、少ない人員でも高い接客品質を維持するという難しい課題があります。すべてを自動化すれば接客は冷たくなり、すべてを人に任せれば、対応品質のばらつきや伝達漏れ、スタッフの負担が増えます。必要なのは、人を減らすためだけのデジタル化ではなく、人が本来向き合うべき接客へ集中できるようにするための仕組みです。
クワイエットラグジュアリーを、ホテル全体の能力へ
ESTAYに「状況・問い合わせ・対応・結果」を一連の記録として残せるようにすれば、単なる問い合わせ件数ではなく、どの対応が宿泊者にとってよい結果につながったかを学べます。それをFAQ、スタッフ教育、業務改善、施設ごとのサービス設計へ還元することで、クワイエットラグジュアリーを一部の優秀なスタッフの勘ではなく、ホテル全体の能力として育てられます。
旅行者が求める体験と、ホテルが抱える運営課題を同時に解決するところに、ESTAYが提供できる価値があります。クワイエットラグジュアリーとは、豪華さを見せることではなく、不便を感じさせないことです。ESTAYは、その見えない上質さを、テクノロジーとデータを活用し、ホテルの日常業務の中で継続的に提供できる仕組みへ変えていきたいと考えています。
ESTAYでは現在、これからのホテル接客を宿泊施設の現場で形にする実証実験を進めています。ESTAYの先行利用にご関心をお持ちの方、新しい宿泊体験の実現にご一緒いただける方は、ぜひお問い合わせください。
※本記事で述べるESTAYの業務連携・記録・学習の仕組みには、現在検証中のα版機能および今後の構想が含まれます。
会社概要
- 会社名
- 株式会社ESTAY
- 代表者
- 代表取締役 小松 武弘
- 設立
- 2024年7月22日
- 所在地
- 東京都中央区銀座1-12-4 N&Eビル 7F
- 事業内容
- 観光・宿泊に関する各種ソフトウェアの開発、IT環境整備の支援等
お問い合わせ先
株式会社ESTAY
info@estay.co.jp